Home Made Baton vol.1 蕎麦とコーヒーの二刀流? アクティブ過ぎる!ある職人の半生とは。

九州の山奥、天孫降臨の郷として親しまれる高千穂の谷あい、ある里山の中に「おたに家」という、小さな蕎麦屋がある。自家栽培の蕎麦だけでなく、もち麦やハト麦、トウモロコシの穀物をはじめ。生姜や椎茸に至るまで無農薬で育てる彼らは、プロフェッショナルという言葉が陳腐に聞こえるくらいに、「職人気質」の集団だった。

ひょんなことから秘境の絶品蕎麦と、それを育む彼らに出会った私は、バラエティに富んだ面々で紡がれる、まるで「家」のような風景達へ、心の底から興味が溢れた。そして今ここに、そんな人々のインタビュー集を記すことにした。
是が非でも次世代へと繋ぎたい、
「手作りのタスキ」=“HOME MADE BATON”として。


年が「おたに家」に出会うまで

  ― 本日はよろしくお願いします。まずは、自己紹介をお願いします。

宮崎県延岡市出身の、山下政宏です。今年で40歳になります。2018年から、おたに家にお世話になって4年目です。趣味は、アウトドアとかマラソンですかね。

  ― マラソンですか・・・凄いですね。どういった所で走られているんですか?

最近はめっきり減らしましたが、前はおたに家から上岩戸大橋(往復30kmの急こう配)まで走ったりしていました。他にも招待選手として東京マラソンも走りましたし、ドイツのフランクフルトマラソンにも出場したことがありますよ。

 ―  物凄くアクティブですね。そんな山下さんの、おたに家に出会った経緯をお聞かせください。

もともと蕎麦好きの父の影響か、小さなころから蕎麦が大好きで、しょっちゅう食べに連れて行ってもらっていました。
家業を手伝っていた2013年、旅行で鹿児島に行ったんですね。その時に食べた「つゆしゃぶ(豚肉のしゃぶしゃぶのシメに蕎麦を入れる料理)」に一目惚れをして、「やっぱり蕎麦を打ちたい」と思うようになりました。勢いで大分県豊後高田市の「そば道場」さんにスタッフとして半年。その後、単身赴任で大阪の名店「なにわ翁(ミシュランガイド掲載)」さんに修行に行かせていただきました。
そして「そろそろ地元に帰って自分の蕎麦が打ちたいなー・・・」と考えていた矢先に、なんと「無農薬自家栽培の蕎麦」が打てるという求人を見つけたんです。それが「おたに家」との出会いでした。

 ―  おたに家に入ってからの、印象的なエピソードはありますか?

4年前の入社初日、70歳でピンクヘアーの店長が現れた時は本当に驚きました。とてもバイタリティに溢れていて、未だに20キロ近い熱湯の入った蕎麦窯を持ち上げるような、強靭な肉体のパワフルおばあちゃんです。

また、流石に「神話の里高千穂」なだけあって、神社通のお客様は多いです。その影響で、僕も神社巡りが好きになりました。今では関西からご来店のお客様の、神社巡りのツアーガイドまで頼まれています。(笑)


琲を焙煎する蕎麦屋との出会い

 ― 山下さんは、蕎麦打ちとは別にKAWASEMI COFFEEというコーヒーの豆屋さんを営まれてますね?どういった経緯で、始められたのでしょうか?

おたに家の今村社長と一緒に研修として、和歌山県かつらぎ町にある「あまの凡愚」さんに蕎麦を食べに行ったんですよ。その時に店主の真野さんが淹れられていた、自家焙煎の珈琲に感動してしまって。それ以来、自分で珈琲焙煎の勉強をし始めました。そして今年(2022年)に入ってから、“KAWASEMI COFFEE”を始めました。

 ― 最近はご自宅でお花屋さんの奥様と一緒に、イベントなどを開催されていますよね?

そうなんです。お客様にはお花のワークショップなどと一緒に、珈琲を楽しんでいただけて嬉しいです。蕎麦と同じで、美味しいと言っていただけると、どんどん探求心が湧いてきます。農家さんと繋がる豆選びを大切にしていて、最近ではスペシャリティコーヒーなども扱っています。

― 山下さんも奥様も、instagramで積極的に情報を発信されてますね?お二方とも2千人超のフォロワーさんがいらっしゃいます。

リール動画などを活用して、おたに家のお店のことや、珈琲や出店イベントのことも知ってもらえるように、ほぼ毎日投稿しています。高千穂のお店にも、最近は女性のお客様が沢山ご来店していただけるようになって、小さなことですが継続の力を感じています。引き続き発信して、蕎麦と珈琲の美味しさを、一人でも多くの方に届けていきたいですね。


麦と珈琲の意外な共通点とは?

 ― 山下さんご自身、蕎麦と珈琲の両方を職人的な生業とされています。頭の切り替えや工程の違いなどに、戸惑いはありませんか?

それが実は、「蕎麦と珈琲」って意外にとても似ているところがあるんですよ。蕎麦の実とコーヒー豆、どちらも加工しなければ美味しく食べられないこと。石臼とコーヒーミルで挽いてから調理するところや、最後は繊細な時間配分でお湯を使って仕上げるところまで。よく観察しながら向き合っていると、物凄く似ているんです。

 — その中でも、特に「おたに家の蕎麦」へのこだわりはありますか?

なんといっても、「無農薬自家栽培ならでは」の、蕎麦の香りと甘みですね。農家の店だからこそ味わえる、毎年違った奥深さを楽しんでいただきたいです。蕎麦打ちに関して言えば、特にもりそばの喉越しや、嚙んだ時の旨味にはこだわっています。十割蕎麦なのにボソボソせずに、最後までじっくりと味わえるのが「おたに家の蕎麦」です。とはいえ、気軽にランチでサラッと食べられるところも、同じく蕎麦の醍醐味ですね。

 ― 聞いていたら、早く食べたくなってきました。最後に、今後の展望などあればお聞かせください。

今後とも、蕎麦と珈琲のように「シンプルだけど奥深い」ものを、追求していきたいですね。その中でも農家さんの大切に育てた作物を繋ぎ続けて、「素材の手助けをしてあげる」ような。そんな存在であれたらなーと、日々想っています。食感と旨味が「モシャッ!ジュワッ!」っと、にじみ出るような蕎麦を打ちたいです。
また、現在宮崎市内のビール工房、「青空エール」さんと提携して有機栽培の蕎麦を使った「高千穂蕎麦エール」を作りました。(現在は大人の事情で「おたに家店舗のみ」で、楽しんでいただいていております。)

今後は、こういった蕎麦の別の楽しみ方も提案していただければ、職人冥利に尽きますね。


あとがき

 山下さんは話せば話すほど、独特の柔らかい笑顔に安心させられ、こだわり抜いた確かな技術には関心させられた。それと同時に、もっともっと「おたに家」のことが知りたくなった。引き続きインタビューを通して、この「家」に住まう人々のバトンを、静かに繋いでいくことにする。是非とも、一緒に楽しんでいただければ幸いである。


◎おたに家 ホームページ
https://otaniya.co.jp/

◎おたに家 Instagram
https://www.instagram.com/otaniya.soba/

◎山下政宏さん Instagram
https://www.instagram.com/takachihosoba_kawasemicoffee/

◎奥様のマキさんお花屋さん“Atelier Maki” Instagram
https://www.instagram.com/ateliermaki/

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